Study

相澤が第一著者としてした仕事の概要です.


  • 有機超伝導体β-(BDA-TTP)2Xにおける分子のダイマー化と電子相関
    擬二次元有機超伝導体β-(BDA-TTP)2X (X=I3, SbF6)の第一原理バンド構造とそれをよく再現する強束縛模型を構築しました. 両物質の第一原理バンド構造は一見異なるものでしたが, 得られた強束縛模型からBDA-TTP分子のダイマー化の大きさが物性に重要な寄与をし得ることがわかりました. そこで, 同一分子上の電子間相互作用を変数として考慮し, 電子相関を二粒子自己無撞着(Two-Particle Self-Consistent, TPSC)法により導入しました. ダイマー化が大きいI3塩の模型でダイマー化を小さくすることで, 電子相関が弱まり, それに起因する物理量はSbF6塩の結果に近づくことがわかりました. これらは, 特定のk経路に沿った第一原理計算では一見隠されているダイマー化の効果と言えます. また有効模型であれば, 物質を特徴付ける量を変数として扱えるため, 特徴的な物性の起源を抽出することが可能と言えます.
    (詳細は, Phys. Rev. B 92, 155108 (2015). )

    図6-1: I3塩の模型における分子のダイマー化の大きさと (a)電子の二重占有率, (b)対角化スピン感受率の最大値. SbF6塩での計算結果も対応するダイマー化の大きさに表示している.

  • τ型有機導体における大きなゼーベック効果の分子依存性
    擬二次元有機導体τ-D2(AuBr2)1+y (D=EDO-S,S-DMEDT-TTF, P-S,S-DMEDT-TTF)の熱電効果について調べました. 以降, EDO-S,S-DMEDT-TTFをOOSS, P-S,S-DMEDT-TTFをNNSSと略記します. 2つの物質について, 第一原理バンド計算をした後, フェルミ準位近傍をよく再現する有効強束縛模型を構築しました. 得られた模型を用いてゼーベック係数Sの温度依存性を求め, 実験で報告される特異な温度依存性と矛盾しない結果が得られました。この背景として, 上部と下部のプリン型バンド構造間のエネルギーギャップが起因することを示しました. これらを踏まえ, より大きなゼーベック係数を持つ有効模型を示し, 物質の合成指針を提案しました.
    (詳細は, J. Phys. Soc. Jpn. 83, 104705 (2014). )

    図5-1: 上下のバンド構造間のエネルギーギャップと温度のエネルギースケールとの関係から提案した ゼーベック係数の特異な温度依存性の起源の概念図.

  • 有機導体β-(BDA-TTP)2MF6の第一原理バンド計算に基づく有効模型構築と超伝導の解析
    擬二次元有機導体β-(BDA-TTP)2MF6 (M = P, As, Sb and Ta)の第一原理バンド計算をし, フェルミ準位近傍をよく再現する有効強束縛模型を構築しました. 得られた模型に分子内で生じる電子間斥力相互作用を変数として考慮し, 電子相関効果を乱雑位相近似法により導入しました. 超伝導発現機構として, スピン揺らぎ媒介超伝導を仮定して超伝導状態を調べました. 得られた超伝導ギャップは, フェルミ面上で4回符号変化をするd波ギャップとなり, 最近行われた実験とも矛盾しないことが示されました.
    (詳細は, New J. Phys. 14, 113045 (2012). )

    図4-1: (a)スピン感受率, (b)フェルミ面とスピン感受率の最大値の波数ベクトル, (c)スピン一重項, (d)フェルミ面のネスティング・ベクトルとスピン感受率の関係.

  • 有機超伝導体(TMTSF)2Xの擬一次元模型における磁場下の超伝導競合
    有機超伝導体(TMTSF)2Xを念頭に置いた擬一次元模型における超伝導状態(スピン一重項, スピン三重項, Fulde–Ferrell–Larkin–Ovchinnikov(FFLO)状態)への磁場(ゼーマン分裂)の影響を微視的理論により調べました. 各超伝導状態の転移温度Tchz(磁場)–Vy(電荷揺らぎの強さ)空間における相図として求めました. 相図から, 電荷ゆらぎが発達した領域では, 磁場の増加にともなってスピン一重項からFFLO状態さらにSz=1スピン三重項超伝導への連続的な超伝導状態の転移が起こり得ることを示しました. また, このような系のFFLO状態では, スピン一重項d波とSz=0スピン三重項f波成分が強く混合していることを示しました。
    (詳細は, J. Phys. Soc. Jpn. 78, 124711 (2009). )

    図3-1: 長距離電子間相互作用(電荷揺らぎの強さ)と磁場のパラメータ空間における超伝導転移温度とその状態の相図.

  • スピン+電荷揺らぎが共存した系におけるFFLO超伝導の微視的理論
    スピン+電荷揺らぎを媒介した超伝導におけるFulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov(FFLO)状態を調べました. 我々は, (i)電荷揺らぎとスピン揺らぎが共存する場合, 磁場の増加による超伝導状態の転移(スピン一重項対からFFLO状態さらにSz=1スピン三重項対)の可能性, (ii)FFLO状態における大きなパリティ混合(スピン三重項成分とスピン一重項成分の混合)という2点を見つけました.
    (詳細は, Phys. Rev. Lett. 102, 016403 (2009). )

    図2-1: 電荷揺らぎがが(a)小さい場合と(b)大きい場合での, パリティ混合(上パネルの左軸)と重心運動量(上パネルの右軸). 下のパネルは超伝導状態の磁場に対する競合(λが大きい状態が有利)を表す.

  • スピン+電荷揺らぎを媒介したスピン三重項超伝導の磁場効果
    スピン三重項超伝導における磁場(ゼーマン分裂)効果の影響を調べました. 強磁性スピンゆらぎ媒介のスピン三重項超伝導よりもスピンと電荷の共存した揺らぎを媒介したスピン三重項超伝導の方が, 磁場の増加に対してより増強されることを示しました. これは, 磁場によるスピン一重項から三重項への超伝導転移の可能性を示唆しています.
    (詳細は, Phys. Rev. B 77, 144513 (2008). )

    図1-1: (a)長距離電子間相互作用(電荷ゆらぎの増強)と磁場のパラメータ空間における超伝導状態の相図. (b)温度と磁場のパラメータ空間における相図.

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